パンチャカルマ体験記

パンチャカルマとは・・・・・

5つの(pancha~パンチャ)行為・治療(Karma~カルマ)という意味で、5つの浄化法すなわち、①ヴァマナ(嘔吐療法)、②ヴィレチャナ(下剤療法)、 ③バスティ(浣腸療法)、④ナッシア(鼻オイル療法) 、⑤ラクタモクシャン(採血療法) を意味します。

 

パンチャカルマは、ストレスや心身に蓄積された毒素を効率的に排出し、トリ・ドーシャ(ピッタ・ヴァータ・カファの3つのドーシャ)のバランスを取り戻すものです

本来の体の機能をデトックス(浄化法)を用いて元に戻すという治療です。

そのため、10日から2週間で行われるのが目安といわれています。(急激な体の変化は、負担をかけるため)また使用されるハーブは患者に合わせて調合されます。

 

※効果は個人差があるため、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。


アーユルヴェーダ・パンチャカルマ体験記 パート1-1

 

「そのままその薬を飲み続けても、病気そのものは良くならないよ。」

ドクターに言われた言葉だ。

 

今回、私はマノジドクターの下でアーユルヴェーダの治療、パンチャカルマを受けた。きっかけは、10年以上前からの生理不順だった。

 

生理不順と一口に言ってもケースは様々だが、私の場合はとにかく生理が来ない。

 

はじめのころは数日から数週間だったが、大学時代には3ヶ月近く生理が止まり、病院でホルモン注射を受けたこともあった。しかし、大学時代は講義にバイトに駆けずり回っており、医師からも特に治療の必要性について案内がなかったこともあり、そこまで深刻に考えていなかった。

 

さらに、社会人になってもその傾向は続いていたが、今度は仕事の忙しさゆえに、自分自身を見返る余裕がなくなっていた。しかし、そんなことも長くは続かない。社会人になって数年、今度は3ヶ月以上待っても生理が来なくなった。さすがに焦って別の病院を訪れたところ、排卵障害を起こしていることが分かった。

 

原因は色々な説があるらしいが、私の場合は体質的なものだと診断された。そこで、医師から低容量ピルの服用を勧められた。

 

しかし、私にはピルが体質に合わなかったのか、最初のころは副作用がきつかった。足がパンパンにむくみ、体はだるく、情緒不安定になった。ピルの種類もさまざまなので、いくつかの種類を試した後、何とか通常の生活を送れる程度に合ったものを見つけた。

 

しばらく飲み続けていると、確かに生理はピルの周期通りに来るようになった。しかし、調子が良いと思ってピルの服用を止めると、また生理が止まる・・・堂々巡りだった。

 

 

その後私は結婚し、大好きな人と一緒にいられるのは幸せだったが、自分の体のことを思うと、子どもを授かることが出来るか不安だった。新居の近くの婦人科で再びピルを処方してもらうようになり、診察を受けたところ、排卵障害とともに子宮が後屈していることも分かった。医師からは、どちらも不妊になる原因だと指摘された。

 

習得できるマッサージを自分でも受けてみたいと思っていた。自分の体もよくなればと思ったからだ。スタッフに「ドクターに相談して治療をしてみては?」と勧められた。

渡印後、ドクターに相談すると冒頭のあの言葉をいわれたのだ。

 

自分でも分かってはいた。私の場合、ピルの処方はあくまで対処法であって、根本解決にはなっていないことを・・・。

 

インドでは、男性患者は男性のドクターに、女性患者は女性ドクターに治療してもらうのが一般的だ。しかし、私は非常に熱心に指導してくれたマノジドクターを信頼していたので、マノジドクター本人に主な治療をしてもらうことを希望した。

 

マノジドクターからの提案で、私がドクターの下で指導を受ける約1ヶ月を使い、まずは体内に溜まっている不要なものを取り除こうということで、パンチャカルマを行うことになった。

大まかなスケジュールは、以下の通りだ。

 

1週目:Virechan(下剤療法)

 

2週目:生理中のため休憩

 

3-4週目:Basti(浣腸療法)

 

※当時、マノジドクターのクリニックのトイレ設備が整っていなかったこともあり、こちらのみ女性のドクターから治療を受けた。

 

下剤療法は、呼んで字のごとく下剤を使用するのだが、いきなり下剤を服用するわけではなく、その準備のためにAbyanga(薬用オイルによる全身マッサージ)とSweda(薬用スチーム)を行う。これを5日間続けた後、6日目に下剤を服用する。

 

しかし、誤解しないでほしい。マッサージと言っても、これはリラクゼーションではなく治療である。スチームの際は、はしご状になった木製ベッドに横たわり、顔だけを外に出す。勢いのあるドクターのマッサージは、不思議と心地良く、時に「イタ気持ちいい」。

 

スチームは顔が出ているので苦しさがなく、ハーブの香りに癒され、冷え性持ちでもある私には最高の心地良さだった。もちろん、この時に使用されるハーブは、個々の体質に合ったものをドクターが処方してくれる。 また、ドクターは常にこちらの様子を確認しながら進めてくれるし、姿勢がつらくないか、何か問題ないか、などを配慮しながら進めてくれるので、安心して身を任せることが出来た。

 

また、AbyangaとSwedaに平行して、毎朝薬用ギーをお湯に溶かして服用する。これは、後に服用する下剤よりも緩やかなデトックス効果が期待出来る。味は、バターに近いものの、決して美味しいとは言えないため、少量の砂糖を入れることを許された。

 

私は便秘とは無縁であり、どちらかというと下痢体質であることを申し出たところ、1日目は20g飲むことになった。2日目、30gに増やすと水のように下ってしまったため、20gに戻して継続することになった。もともと便秘体質ではない私だったが、より不要なものが外に出やすくなったようで、心なしか少し体が楽になったように感じた。

 

6日目、この日はドクターから処方された下剤を服用し、1日ゆっくり滞在先で過ごす。下剤は私の体質に合わせ、通常の半分以下の量を渡されていた。前日にドクターから食事のメニューや過し方について細かい指示があり、それに沿って進めた。下剤服用後、以下のような症状があらわれた。

 

5分経過

一回目のトイレ。通常通り。

45分経過

下痢が始まった。しかし、下痢と言っても排泄物が体外にストンと落ちる感覚であり、お腹を壊したときのような痛みや不快感はない。不思議な感覚だ。

1時間経過

同じく下痢。薬が少し多かったのか、吐き気を感じる。

1時間経過

下痢とともに嘔吐。この辺りから、寒気やだるさで本を読む余裕もなくなっていった。

2時間経過

下痢と嘔吐。嘔吐するとは思っていなかったため、心配でドクターに電話する。確認したところ、問題ないのでそのまま続けるように指示される。それとともに、何か不安なことがあればいつでも電話をしていいと言われる。ドクターの気遣いが嬉しく、安心することが出来た。

2時間10分経過

下痢。

2時間15分経過

この辺りから水のような下痢になる。吐き気はおさまってきた。

2時間半経過

この辺りから量が少なくなり、山は越えたと感じる。

2時間40分経過

ここで下痢が一度止まる。ここでチャイを飲む。

3時間5分経過

下痢。

3時間10分経過

下痢が落ち着き、食欲がわいてきたため、液体に近いペースト状のおかゆを食べる。この日は、これ以外食べてはいけない。しかし・・・素っ気無いおかゆのなんておいしいことか!体に染み渡る優しさに、心まで潤っていく感覚だった。

 

7日目、少し下痢が続いているものの、その他はすっかり回復。この日は、段々と通常食に戻すための準備段階であり、やわらかいおかゆに豆のスープカレーを食すことが出来る。

 

8日目、下痢もおさまり、通常のご飯にマサラで軽く炒めた野菜、チャパティを食べられるようになる。

 

9日目には通常食だが、今までに比べ、食事が数倍おいしく感じられる。また、アレルギー性鼻炎持ちで鼻炎薬が手放せない私だが、以前に比べてその症状が軽くなったように思えた。

浣腸療法は、下剤療法とは違い初日から浣腸を行うが、AbyangaとSwedaを施した後になされる。しかし、先に下剤療法をやっていたため、今回のAbyangaとSwedaは全身ではなく、必要部位のみに特化したものとなった。浣腸には、ハーブ抽出液とオイルを用いる。ハーブ抽出液のみの方がデトックス効果は高いが、やはり私の体質に合わせ、これとオイルを1日交代で計7日間行った。

 

どちらも、ホースのような管を使って肛門から体内に入れる。少しすると便意を感じるためトイレに走ることになるが、下剤療法と同様、腹痛を起こしたときの嫌な感覚は皆無である。これに使用される管は、患者個人専用のものとなるため、衛生面でも安心だ。

 

女医であるキルティドクターは、さまざまな面で女性に対する配慮があり、何度もトイレに行かなくてはならない状況ながら、安心して治療に集中することが出来た。

すべての療法を終えた後、ドクターから「成功だね」と言われた。特に大きな体重の変化などはなかったが、体調はよかったため、安心して帰国することが出来た。

 

帰国後、ドクターとメールのやり取りを続けた。ちょうど滞在中に来た生理後からピルの服用を中止していたが、通常のサイクルから約1週間遅れで自然な生理が復活した。

 

自然な生理が来たのは、数年ぶりのことだった。その後、子どもを授かるためのアドバイスも受けることが出来た。性行為のタイミングや食事に関することなど、あらゆる面でかなり細かい内容だったが私も出来る限りそれに従うようにした。

 

1ヶ月目は夫の仕事の都合などもあり、すべてのアドバイスを守ることが難しかった。しかし、2ヶ月連続で自然な生理が来た。通常通りの生理が続けて来たのは覚えていないほど前のことであり、逆にこれには驚かされた。

 

さらに驚いたのはその翌月・・・妊娠が発覚した。

 

正直、もう何ヶ月かは様子を見なくてはならないと思っていたため、これは驚き以外の何ものでもなかった。

ドクターはもちろん、Nomadasiaスタッフも心から喜んでくれ、それを受けて驚きから嬉しさに実感を変えることが出来た。妊娠後、アーユルヴェーダの授業で学んだ自分の体質に関する内容を見直し、主に食事に関して出来る限り体質に合ったものを選んで食べるように心がけた。

 

もちろん、妊婦なのでダイエットはせず、必要な栄養素は取るように心がけた。体重が多すぎる私だったが、自分の体質に合った食事をしているためか、出産までの体重増加も日本の医師から指示されていた規定範囲に収めることができ、助産師さんからもお褒めの言葉を頂くほどだった。

 

ドクターとのやり取りも続けていたため、困ったときや疑問があるときは、その都度メールでアドバイスを受けていた。ドクターはどんな些細なことでも、熱心かつ快く答えてくれた。Nomadasiaスタッフも度々連絡をしてくれた。

 

そして、私は無事出産し、その後1ヶ月ほどで体重が10kg落ちた。

それは病気でもなんでもなく、体脂肪も減り、腰痛も軽減し、出産前後の検査も正常な数値を示していた。妊娠中もアーユルヴェーダにそって自分の体質に合った食事法を心がけ、体重管理を行ったためだと考えられ、妊娠前よりも健康的な体になっていた。

 

日本では、不妊症のためのきれいな施設や即効性のある薬は、他にいくらでもある。

しかし、私はインドでアーユルヴェーダの治療を通して、健康的な身体と子供を授かることができた。何より嬉しかったのは、いまだにやり取りを続けているドクターとNomadasiaスタッフの熱心さと心遣いだ。滞在中のサポートをしてくれるのは普通なのかもしれないが、帰国後も継続してフォローを行ってくれる・・・これが本当のアットホームというものではないだろうか?

 

コース受講後1年たっても「お子さんは元気?」「この前、休暇で旅行に行ってきたよ」など、何気ないメールのやり取りがいまだに続いている。

こちらからの質問にも、丁寧にアドバイスをくれる・・・もうひとつ私が授かったのは、「かけがえのない財産」・・・それは第二の家族、第二の故郷なのだ。

アーユルヴェーダ・パンチャカルマ体験記 パート2

 

パンチャカルマ(ヴィレチャナ(下剤療法))を受けて

 

「肌がきれいになったよね。」

 

私が気づかない変化に周りが気づいたのは、この一言が最初でした。

 

パンチャカルマを受けた直後は、以前と変わりませんでした。

正直、もっと劇的に変わるのかしらと思っていましたが、本当の効果は

受けた後の私の「生活」に表れたのです。

 

人間は、特に都会の喧騒やストレスに毎日さらされている私たちの体は

知らず知らずその状況に「対応」できるようになります。

どういう事かというと、必要な感覚を麻痺させることでそのストレスを逃れているのです。

 

味覚、嗅覚、もその一種です。パンチャカルマは悪いものを外に出す

だけではなく、「体の機能をリセットする」役割を持っています。

 

私の場合、今までの味覚が変わり、外食する回数が減りました。それだけではなく

コンビニのお弁当、ファーストフード、居酒屋のメニュー、アルコール、コーヒー、

「食べなくてもよくなった」のです。

以前は、好きで食べていたものが美味しいと感じられなくなったというのは

施術からだいぶたってから気づきました。そのかわり「おいしい」と思うものも

変わってきました。

豆腐、野菜、キノコ、玄米、雑穀類・・・・

頭でわかっていても、ついインスタントやファミレスに頼りがちがちだった私が

無理なく健康的な好みになれたことはパンチャカルマを受けた後です。

 

仕事がら不規則な食生活でしたが、深夜の食事がめっきり減りました。

そのため、意識することなく体重が落ちていきました。それはどちらかというと

「不必要なものがはがれていくような」感覚です。

激しい運動も食事制限もしていません。

 

もちろん個人差もありますし、ほんの一例なので100%人によって症状が

違います。しかしパンチャカルマは人間本来の動物としての機能を取り戻す

リセットする作用があります。

女性の体は神秘的です。だからこそ自然との調和をとる大切さ、アーユルヴェーダの真

の力が発揮されるのでしょう。